2019年度 労使交渉要望書への法人からの回答
2019年度労使交渉要望書への法人からの回答
労使交渉要望書について、法人から1月22日に回答がありました。要望書については、2019年度労使交渉・要望書を参照ください。また、5「民主的な大学運営の実現」 における別紙回答も続けて記載します。
以下、法人からの回答文
2020 年 1 月 22 日
愛知県立大学教職員組合
執行委員長 伊藤 稔明 殿
愛知県公立大学法人 理事長 鮎京 正訓
愛知県立大学 学長 久冨木原 玲
2019 年度労使交渉要望書について以下のとおり回答します。
1. 教員の研究環境改善要求
(回答)
① 委員会業務の見直しや効率的な運営に努めますが、第3期中期計画の遂行や時限的条件のある課題に対応するため、必要に応じ新たな委員会やWGを設置することがあります。 その際には、担当委員のみに負担が集中しないように協力する工夫について、共に検討していきます。
② 大学の予算繰りは非常に厳しく、教務委員等に係る予算を捻出するためには全学的な見直しが必要です。 教務委員は、学部・学科の特性に応じて選考や業務内容の調整をしており、一部の教員に業務が集中する傾向にあるので、業務の共有・分担やカリキュラム運用方法の工夫などについて、各学部・学科で調整・検討していただくよう働きかけていきます。
③ 会議は学部・学科・委員会・センター等の多様な主体で開催されており、法人や大学執行部が管理・運営しているものではないので、全学的な把握は困難な状況ではありますが、会議時間の短縮に向け、会議の運営方法等については共に検討していきます。
④ 全学的な非常勤講師予算の見直しをしない限り、新たな予算を付けることが難しい状況にあり、各学部におけるカリキュラム運用の工夫により予算を捻出する必要があります。
⑤ 食糧費については、「愛知県公立大学法人における食糧費に関する取扱要領」において 適正な執行のためのルールを示していますが、他大学の取り扱いを踏まえ必要があれば見直しを検討します。 物品調達については、発注年度内に納品・検収する必要があり、購入依頼の期限を1月下旬に設定しています。年度末に依頼が集中することに加え、運営交付金を前提に年度単位で決算を行うことから、当該期限を変更することは困難な状況にあります。なお、やむを得ない事情があり、購入予定内容に係る事前の相談があれば、個別に対応しております。
2. 正規職員の労働環境改善要求
(回答)
①② 正規職員は106名が在職していますが、女性の割合が高く、育児休業や短時間勤務中の職員が多いことから、法人全体でみて職員数の多い学務課において、こうした職員の割合が高くなっています。また、学生支援課に相談件数が増加していることは把握しております。
相対的に時間外勤務時間が少ない所属もあることから、年度当初において、各部署の 業務量の差異解消に向けた人員配置に取り組んでいきます。
なお、年度当初に想定していない業務量の増加に対しては、部門内での柔軟な配置転 換を可能とし、所属間の業務の均衡を図るよう努めております。
③ 「仕事の進め方の提案について」は、各職員の担当する仕事の進め方の見直しに係る 提案を受け付け、参考となるものを職員全体で共有することを目的として実施したものです。
今後は、内容を紹介しつつ、新規提案の受付について行っていきます。
3. 契約職員の正規職員としての雇用について
(回答)
① 本法人の正規職員採用は本年度採用者が2名であり、今後も新規採用者を大量に採用できず、限られた採用枠の中では、優先枠を設定することが困難な状況にあります。
② 令和2年度からの期末手当支給に向け対応しており、組合への事前提示、説明会の開催、就業規則の改正を行っていきます。
③ 休暇制度は、設置団体における非常勤職員の制度との均衡を考慮して定めているところであります。
4. 安定的な労使環境の創出について
(回答)
① 毎年、協定で規定する時間外時間数については、協定を締結する年度の実績を考慮して決定するため、集約に時間がかかるという現状があります。協定締結の前年度の実績に基づく設定等の検討も踏まえ、できる限り前倒しで協議が行えるよう努力していきます。
②③ 令和2年1月22 日付けで過半数代表者を決定しております。
④ 労使懇談会、今回の労使交渉など、例年どおり時期をみて開催しており、安定的な労使関係が築けていると認識しています。労働協約を締結すると、第2組合が設立した場合に当該組合とも同様の協定を締結せざるを得ず、貴組合とこれまでどおりの関係を維持しづらくなる等の新たな問題が生じる恐れがあります。よって、令和元年 12 月18 日にお示しした「安定的な労使関係に係る覚書(案)」により、覚書を取り交わしたいと思います。
⑤ 45 日以内の令和2年1月 22 日付けで回答しております。
5. 民主的な大学運営の実現
(回答)
①②③ 令和元年 10 月7日付け「大学の将来を見据えた教員の採用・昇任人事について」 に関する要望については、別紙のとおり回答します。この文書の趣旨等については、 同年 12 月 11 日の学長報告会でも説明しました。なお、別紙は、同年 12 月 10 日の組 合交渉の際に提示をしたものから、(4)の「教授枠」の昇任人事を公募とする提案に 関する記述を削除したものです。
以上
<以下、別紙>
「民主的な大学運営の実現」について
学長 久冨木原 玲
10 月 7 日付文書「大学の将来を見据えた採用・昇任人事の実現に向けて」を冷静に虚心 坦懐に読み直していただきたいと切望します。そしてそのどこにも、「学部の自主的な運営を揺るがす」と解されるような内容は書かれていないことを確認していただくことから始めていただきたいと思います。その理由を以下に申し述べます。
(1) 10 月 7 日付文書の趣旨は、「2.目的と検討課題」(1 頁)にあります。
「学部全体のカリキュラムや教育プログラム、大学の将来、教養教育、学部連携、大学運営などのさまざまな視点から、採用人事、昇任人事をすすめるための全学的な議論のしくみを検討する。」
これは、まさに「全学的な議論のしくみを検討する」ことを提案するものであって、そのための視点については、「学部全体のカリキュラムや教育プログラム」と冒頭で述べるように、「学部の自主的な運営を揺るがす」と解されることとは逆の趣旨が明確に述べられているはずだと思います。
(2) そしてこの検討については、全学部の教授会での承認も得て、現在、その実施段階にある第 3 期中期目標および第 3 期中期計画に基づいているという点を、何度も想起していただきたいと思います(10 月 7 日付文書 1 頁中段に掲載)。具体的には、「31 年度計 画」において、
「採用・昇任等について、現行制度を適切に運用しつつ必要に応じて検証・見直しを行う」
と述べられている点に対応しています。これは今年度中に必ず実行し、県や法人評価委員会に対して説明しなければなりません。
(3) 「3.提案」における「全学人事委員会の位置づけの明確化・役割の活性化」について。
① 募集要項の段階から慎重に吟味するということは、即ち、学部から上ってきた人事案を最終的な段階で差し戻すことなどあり得ず、人事開始時から、学部長とのすり合わせをした上で、当該学部長の説明をよく聞き、5 学部長を含む全学人事委員会において審議するという提案であるとご理解いただきたいと思います。
② 5 学部長を含む全学人事委員会が募集の最初から審議・決定にかかわるのは、中期目標・ 中期計画・31 年度計画を遂行しなければならない大学幹部として、当然の責務であると考えます。そして学部長が各学部の代表である以上、ひとり学部長のみの判断に由るということはありえず、学部長は常に当該学部内の「議論状況」を把握し、それを踏まえた意 見形成をおこなうことは自明の前提のはずです。その意味において、第 3期中期目標・中期計画を承認した構成員も共に、この責務を負っていることは是非とも理解をいただきたいと思います。
③ 併せて、10 月 7 日付の上記文書は、5 学部長と協議を重ねて合意を得たものである点は強調しておきたいと思います。しかしながら、そのことについての明確な文言がなく、また学長単独名の文書として発せられたために、学長の「介入」とする明らかな誤解が生じたものと思われますが、これが事実に反することは、以上の経緯の説明で明らかであると思います。
(4) 最後に、第 3 期中期計画の今年度計画に即した 10 月 7 日付文書の内容を、あらためて本学構成員に想起していただく必要がある理由と事情を、可能な限り申し述べておきたいと思います。すでに学内教職員は熟知しているはずですが、そこには大学の現在および今後の財政運営状況が大きく関わります。
① 大学予算が逼迫しているという現実があります。それに対して設置者側は、やはり毎年、予算を削減することを決定しているのです。この現状を冷徹に捉えれば、大学の今後が決して予断を許さない状況であることは客観的に認識できるはずです。この点は、これまで実施してきました学長報告会でも包み隠さずお伝えしてきました。
② こうした中で、設置者からの突然の要求や命令が出される前に、いかにして愛県大の独自性を大切にし、本学での学びを望むまだ見ぬ将来の学生に対して保証し、そのために我々がいかにして生き残っていくかの戦略を、愛県大が一丸となって考え、提示し、学外に発信していくかが重要であり続けています。生き残りをかけた連携・合同の戦略的動きは、 すでに報じられている通り、我々の近隣大学にも見え始めました。
③ 例えば、非常勤予算の現状が厳しいことについては一定の理解をいただいているところでありますが、人件費が大学全体の予算を圧迫している状況は変わらず、大学でありながら、学生の教育資器材には常識を逸脱するほどの予算とも言えない額しか充てることのできない現実があります。
④ 現行の教職員の身分保障をしっかりと維持し、本学の学生の教育環境を最低限、保障していくために、限られた財源をいかに有効活用し、ただ予算の漸減を座して待つだけではなく、いかにしてそれを増やしていくかも、全学構成員の知恵をいただきながら、執行部としてそれを実現していく方途を考え続けたいと思います。
以上のことから、10 月 7 日付文書が決して撤回すべきものではなく、全学構成員の意識を一つにするために、これまでに承認された手続きに則っていることがおわかりいただけるものと思います。