2010年 6 月 2日

2010年度 重点要求項目

2010年度の重点要求項目が定期大会で次のように採択されました。

I.「良質の研究にもとづく良質の教育」のための基盤整備

1. 研究・教育のための時間と資金の確保

「良質の研究にもとづく良質の教育」は、応分の時間が確保されてはじめて達成できる。相次ぐ人員削減で勤務環境が厳しくなる一方、研究・教育を促進するための配慮は十分になされていない。本学の教職員数は、法人化された2007年に教員(県大+看護大)は211人、職員は正規職員が51人(うち法人職員1人)、非正規(契約)職員が36人であったのが、2010年には、教員(看護学部を含む)は204人、職員は正規職員が55人(うち法人職員15人)、非正規(契約)職員が50人となっている。(この間、職員は4人増えているようにみえるが、これは法人化初年度には県庁でも法人業務が担当されていたものが、2年目からは県大の法人本部事務局に移されたことによる。)業務全般を再検討し、業務の無駄を指摘して大学の知的強化を図るよう要求する。また「研究休暇」(サバティカル)の制度が未整備であることは、本学が研究機関として不備であることを端的に示す現象であり、強く改善を求める。

また「良質の研究にもとづく良質の教育」は、応分の資金が確保されてはじめて達成できる。愛知県立大学法人の予算は、教職員給与を含む運営費交付金が毎年1%を削減されるなか、この間、55億円(2007年)から51億円(2010年)に減らされている。また、愛知県立大学(看護大・学部を含む)の基盤教員研究費は1億3,920万円(2007年)から1億3,800万円(2010年)と低い水準のままである。また近年では、個々の教員研究費を削減して競争的資金を増大させる傾向にあるが、応募を強要される科研費と並んで、様々な競争的資金が学内に乱立し、見通しが利かない有様となっている。個々人の非競争的研究費を維持拡大するとともに、競争的資金の整理統合を行うよう要求する。

2. 給与および期末勤勉手当の正当な保障

長引く不況の影響で公務員の給与も一律に抑えられるなか、公立大学である本学でも教職員の給与が抑えられ、期末勤勉手当の削減(0.2%凍結)や地域調整手当ての削減など諸手当などの削減により実質的には年を追うごとに減給となる場合も出ている。教職員の生活基盤である給与及び諸手当の不当な削減には断固抗議し、待遇の適正を求める。
教職員の期末勤勉手当(ボーナス)のうち、勤勉手当にたいする格差支給にも反対する。また、法人化4年目の今年度は、本組合の取り組みもあって、先述のように法人職員は1人から15人に増やすことができた。法人職員と県からの派遣職員(現在40人)との間に昇任、昇格における格差があってはならず、法人職員の専門的職務遂行実績等を適正に評価した昇任昇格制度の整備を求める。さらにまた、非正規職員(契約職員、現在50人)の正規職員への登用制度を整備するとともに、その待遇の改善を求める。
なお給与と関連する問題として、本学の教授枠が52%に抑えられている問題、外国人語学教師の採用が不自然に制限されている問題があり、改善を求める。

3. 前歴換算基準の明確化と改善

法人化後も現状維持とされた他大学・民間からの採用、外国人の採用に際しておこなわれている不公正・不平等な前歴換算基準の公開と改善を求める。とりわけ法人化以後の採用者については、前任校・機関と同等の身分保障が確保されなければならない。「より良い大学づくり」のための優秀な人材を確保しようとするのであれば、法人が真摯に取り組むべき課題である。

4. 困窮学生への経済的支援の拡充

「100年に1度の危機」がいわれるなか、困窮学生を対象とする「学費減免措置」の堅持と拡充を求める。この「学費減免措置」は、成績ではなく経済状況を基準にしないと、困窮学生の支援として意味をなさない。また可能な限り経済的状態とは関係なく、意欲のある学生に学ぶ機会を与えるという見地から、愛知県立大学の比較的低額な授業料は今後もその堅持を要求する。奨学金制度を拡充するとともに、貸与奨学金制度から給付奨学金制度への抜本的改善を求める。

5. 学生の利便を考えた制度改善・適切な非常勤講師の配置

大学再編に伴い夜間主が廃止された結果、学生が受講できる授業も削減され、不満が出始めている。他にも、教材費の減額、図書館蔵書の脆弱さ、留学生対策専門事務局の欠如、学部夜間主廃止後も大学院夜間で必要になる事務体制・図書館開館の維持など、問題点は山積している。学生の利便を考えた制度の改善を要求する。
ちなみに、教員数が削減されるなかで、多くの教員は大学院授業の夜間開講や修士論文指導、博士論文指導など全体として授業負担は益々過重になってきている。教員免許状などの取得にかかわる授業など、必要に応じて非常勤を配置できる予算の確保を求める。

6. 非常勤講師の待遇改善

「合理化」を理由に大幅見直し・縮小を迫られている非常勤講師枠の下で、本学の非常勤手当は他大学に比しても格段に低い(経験年数に応じて1コマあたり8,640円~9,850円、ちなみに首都大学東京は10,800円(教授)、名大は12,000円(教授)、愛知淑徳は14,800円(教授))。また本学の非常勤講師控室には担当事務職員がおらず、非常勤講師用ロッカーが少なく、非常勤講師を慰労する制度もないなど、その待遇は他の大学と比較して劣悪である。「良質の教育」を実現するための逸材を確保せよというのであれば、非常勤講師の待遇が改善されるべきことを要求する。

II. 専門的事務体制の確立と強化

1. 専門性の高い大学事務体制の確立

2009年度からの新愛知県立大学の発足に伴う新体制への移行を目前にしながら、大学の実態に全く配慮しない2008年度末の県の人事異動命令は、大学事務体制に多大な混乱と勤務環境の劣悪化をもたらした。2010年度は新大学二年目ということで、2009年度よりは混乱も少なく推移しているが、それでも学務課などでは時間外勤務が常態化し、しかも全ての時間外勤務が手当の対象として把握されておらず、超勤手当支給や割増賃金、さらには勤務時間の振替措置が適正に措置されているとは言い難い。大学の長久手キャンパス(事業場)における三六協定(労働基準法第36条に定める時間外及び休日の労働に関する規定に基づく協定で、長久手キャンパスでは本組合委員長が労働者の過半数代表者として今年度も4月1日に署名締結している)では、労働時間の延長(残業)を、「1日5時間以内、一ヵ月45時間以内、1年間360時間以内」と定めている。また「特別な事情が生じた場合」については、一定の手続きを経て労働時間を延長(1日6時間、一ヵ月50時間、ただし1日5時間を越える回数は一ヵ月に6回まで)することができる例外規定を設けている。法人がこれを遵守することを強く求めるとともに、学務部などの異常な勤務状況を改善するために増員するなど、教育研究をゆとりをもって創造的に支援できるよう、人事(配置)計画の大幅な改善を要求する。
また、本組合としては、こうした事態に適切に対応しうる教務、入試、就職、研究などの各専門領域における愛知県立大学独自の専門事務体制の確立を目指し、そのための十分な人材確保と予算措置を講じるよう要求する。また、本人の希望も考慮しながら、一つの職場に2、3年は留まり、技術や経験が蓄積されていくような人事政策を要求する。
更に、大学事務体制の専門職化には、大学の組織特性に精通した有能な部・課長職員の採用が不可欠である。本学の長久手キャンパスの場合、管理部(庶務課、経理課、入試・広報課)、学務部(学務課、学生支援・国際連携課)、学術情報課(図書情報課、研究支援・地域連携課)の3部8課でされている。このうち、学務部長を除いて、部課長職はすべて県からの派遣職員によって占められている。法人化4年目をむかえた今日、法人職員の中から、あるいは公募による法人職員を部課長に大胆に抜擢していくことを求める。この点では、隣の国立大学法人愛知教育大学では、かつては15人ぐらいいた文科省のキャリア組を5人にまで減らし、12の課長職をすべて、公募を含めて法人雇職員にし、今年4月には初めて女性課長も生まれている。また、大阪市立大学では、部課長を基本的に法人職員が占め、その部下に大阪市からの若い派遣職員をあてるというデザインで改革をすすめており、検討に値しよう。

2. 十分な情報共有と事務系統の統一性

大部分が県派遣職員から構成される法人本部と、法人(常勤・契約)職員の割合が高い大学側との間には、しばしば情報共有に関する齟齬が見られる。加えて旧年度で可能であった事務手続が、人事異動後の配置換えによって新担当者となった途端に「前例なし」として処理されることも少なくない。これは教育研究に遅延をもたらす不合理な事務体制の実態である。事務職員全員が「より良い大学づくり」の主体であることを改めて想起し、情報の公開と共有を強く求める。

III. 「官僚制化」の防止

1. 学長選挙制の維持・法人理事長選挙制の要求

学長は大学の顔であり、研究・教育上顕著な業績を上げた人物でなければ就任する資格がない。2011年秋には、次期学長選挙が予定されている。このため従来の学長は全常勤教員による選挙で選出されており、法人化後もこの習慣が事実上踏襲されてきたが、今後もそうした伝統が継承されるよう要求する。更に大学経営を大きく左右する理事長も、教職員の意向に基づき任命されるのが本来の姿であろう。今後の法人理事長は愛知県庁のみならず、全法人教職員の総意に基づき、大学行政への理解が深い人物が任命されることを要求する。

2. 大学及び教職員の評価制度の再検討

教員が自分の研究・教育を振り返ることには意味があるが、自立した研究者である教員を組織の歯車のように遇する制度は適切ではない。評価は飽くまで、教員が自分で自分のために行うものである。その意味で、細々と目標・計画を立てさせたり、各評価分野の総括を決まり文句で終えさせたり、根拠となる組織の「条項」を挙げさせたりする「目標設定」は品位を欠いていると考える。また学内評価委員会が教員に「目標設定」や「自己点検・自己評価」を毎年提出させるような制度設計にも反対する。更に卒業論文指導が佳境となる12月に「自己点検・自己評価」の締め切りを設定するような措置の改善を求める。
なお2010年度6・7月より、事務職員の「役割達成度評価」の試行が始まることになっているが、これも類似した問題を孕んでいる。事務職員を評価で拘束することは、個々人を委縮させ、組織の停滞を招く恐れがある。また評価によって、事務職員が仕事へと駆り立てられ、健康被害を引き起こす恐れがある。更に県庁職員に倣い法人職員を対象に試行されるこの制度は、一体どのような「役割」を評価するのか、どのような効果が期待できるのかが曖昧なままである。現在のところは未定としつつも、将来的には評価を給与と連関させようとしているところも問題である。教員と同様に、事務職員への安易な評価制度導入にも反対する。

3. 次期「中期目標」への現場の声の反映

法人の経営を大きく左右する六箇年ごとの「中期目標」、「中期計画」は、第一期のそれの策定過程(2005~2006年度)では、教職員の声が反映される手続きが踏まれたとはいい難い。研究・教育のような専門性の高い業務について、専門家である教職員の意見を反映しないで目標を設定するということは適当ではない。今年度新たに策定が開始されるであろう次期の「中期目標」、「中期計画」の作成に当たっては、教職員側の意見を尊重するよう要求する。また本来、評価は双方向からなされるべきであり、愛知県立大学法人評価委員会が大学や教職員を中期目標に照らして官僚的、一方的に評価することがあってはならない。法人は、「良質の研究にもとづく良質の教育」の実現に向け、本当に教職員の教育研究条件や職場の勤務条件を維持、向上させてきたのだろうか。国立大学等の法人化に際して採択された国会の付帯決議にも照らして、私たち自身が職場における日常感覚に基づいて法人を厳正に評価していくなど、共同的な評価に基づく大学づくりを進めていかねばならない。

4. 任期制への反対

中期計画に謳われている任期制導入は、教員の研究・教育を向上させないどころか、その基盤を破壊し、生活基盤をも危険に晒すものである。事務職員と同様に教員にも出産・育児などの生活のリズムがあり、また単純に時間に比例して成果が出るようなものではない。更に日本の大学の多くは、現在なお業績に根差した、流動的で公明正大な採用人事をしているとは必ずしも言えず、また分野によっては業績が就職につながらないことも多く、「業績さえ積めば必ず先は開ける」などというのは、根拠のない幻想である。日本社会の体制が全く整わないままの任期制導入は、学問を破壊するだけであることを主張する。

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Posted on 6 月 2nd, 2010 by admin and filed under お知らせ |