2011年 2 月 2日

2010年度理事長交渉

2/2に理事長交渉を行いました。続きに交渉項目を掲載します。

      大学及び教職員の評価制度の再検討

 2010年度8月より、事務職員の「役割達成度評価」の試行が始まったが、これは大いに再考の余地のある制度である。確かに一般に、職業人が自らの職務内容を振り返り、改善可能性を探ることは必要だろう。しかし「勤務評定」と平行した「役割達成度評価」は、屋上屋を重ねる観が否めず、時間の浪費は勤務の妨げになる。また再三に亙る執拗な評価は、ややもすると個々人を委縮させ、組織に従順で創造力のない人間性を育み、結果として組織の停滞を招く危険性がある。また評価によって、事務職員が仕事へと駆り立てられ、健康被害を引き起こす恐れがある。また「がんばった」「チャレンジ」「ジャンプ」など、「親しみやすさの追及」と称して、法人が事務職員を子供のように扱っている現制度の言葉遣いも問題がある。事務職員の間からは、「評価する管理職側(県職員)の業務内容への知識が、通常の会社と比較して本質的に不足しており、評価は順調に進まないのではないか」という強い疑問が寄せられている。法人側はこれまでの議論ですでに、「管理職には人員管理の能力がある人物が配置されているはず」という説明をしているが、現場の職員側の感じ方は異なるようである。

更に職員からは、「勤務評価の作成法について、全てAをつけてもいいのか、あるいは謙虚に書くべきなのか、しかし頑張っているのに、低い評価を書くのも悔しいし、どう書けばいいのかわからない」、「県庁でも評判が良くない評価制度を試験の試験という感じで導入することが解せない」、「勤務評定を二度やっている感じで負担が大きい」、「まず各課のレベルをあげていくということをいわれるなら分かるが、いきなり個人のパフォーマンスが問題にされるのはどうか」、「評価を慮って残業の伺いがしにくい環境にしないで欲しい」、「契約の人は安い賃金なのに、評価制度だけは同じなのは納得いかない」、「法人本部の意識が大学の現場の意識と乖離している」、「法人本部は大学のサポート機関ではなく、監視機関になっている」、「法人本部職員に、大学の現場を見てもらう機会を与えるべきではないか」というような声が挙げられている。本組合としては最低限、給与への拙速な反映を行わないこと、試行実施後の評価は職員を交えて行い、安易にそのまま「本格実施」(=給与への反映)をしないこと、残業手当の多少によって評価しないことを求める。

      給与および期末勤勉手当の正当な保障

長引く不況の影響で公務員の給与も一律に抑えられるなか、公立大学である本学でも教職員の給与が抑えられ、期末勤勉手当や地域調整手当の削減など諸手当などの削減により実質的には年を追うごとに減給となる場合も出ている。教職員の生活基盤である給与及び諸手当の不当な削減には問題であり、待遇の適正化を求める。また契約職員が県派遣職員、法人職員と同様の厳しい勤務実態にも拘らず、期末勤勉手当がないという実態が問題化しているので、この点も改善を求めたい。

法人化4年目の今年度は、本組合の取り組みもあって、先述のように法人職員は大幅に増やすことができた。法人職員と県からの派遣職員(現在40人)との間に昇任、昇格における格差があってはならず、法人職員の専門的職務遂行実績等を適正に評価した昇任昇格制度の整備を求める。さらにまた、非正規職員(契約職員、現在50人)の正規職員への登用制度を整備するとともに、その待遇の改善を求める。

なお招聘講師や非常勤講師へ支払う旅費に関して、現在は京都・大阪名古屋間には新幹線「ひかり」代しか支払うことができないことになっている。これは、本学の旅費規程で定められているのではなく、愛知県の旅費規定に準拠しているものだが、現在は「ひかり」の運行が少ないので、これを機に「のぞみ」代を支払えるよう、本学の旅費規程を改正すべきだと思われる。

      専門性の高い大学事務体制の確立

2009年度からの新愛知県立大学の発足に伴う新体制への移行を目前にしながら、大学の実態に全く配慮しない2008年度末の県の人事異動命令は、大学事務体制に多大な混乱と勤務環境の劣悪化をもたらした。2010年度は新大学二年目ということで、2009年度よりは混乱も少なく推移しているが、それでも時間外勤務が常態化し、しかも全ての時間外勤務が手当の対象として把握されているわけではなく、超勤手当支給や割増賃金、さらには勤務時間の振替措置が適正に措置されているとは言い難い。例えば学務部は、以前から多数の学生への対応、附属する研究所への対応で超過勤務が常態化する部局として有名だが、状況は一向に改善していない。最近では数箇月に亙って、平日深夜までの勤務に加えて土日出勤を余儀なくされ、超過勤務も月45時間以内という制限を大幅に越えるという状況が見られる。大学の長久手キャンパス(事業場)における三六協定(労働基準法第36条に定める時間外及び休日の労働に関する規定に基づく協定で、長久手キャンパスでは本組合委員長が労働者の過半数代表者として今年度も4月1日に署名締結している)では、労働時間の延長(残業)を、「15時間以内、一ヵ月45時間以内、1年間360時間以内」と定めている。また「特別な事情が生じた場合」については、一定の手続きを経て労働時間を延長(1日6時間、一ヵ月50時間、ただし1日5時間を越える回数は一ヵ月に6回まで)することができる例外規定を設けている。法人がこれを遵守することを強く求めるとともに、学務部などの異常な勤務状況を改善するために増員するなど、ゆとりをもって研究・教育を支援できるよう、人事(配置)計画の大幅な改善を要求する。

また本組合としては、こうした事態に適切に対応しうる教務、入試、就職、研究などの各専門領域における愛知県立大学独自の専門事務体制の確立を目指し、そのための十分な人材確保、予算措置、新人研修の措置を講じるよう要求する。また、本人の希望も考慮しながら、一つの職場に2、3年程度は留まり、技術や経験が蓄積されていくような人事政策を要求する。更に、契約職員が法人職員の採用試験を受験する場合には、その本学における業務実績を評価して、一次試験を免除するなどの措置を講ずることが望ましい。

更に大学事務体制の専門職化には、大学組織の特性に精通した有能な部・課長職員の採用が不可欠である。本学の長久手キャンパスの場合、管理部(庶務課、経理課、入試・広報課)、学務部(学務課、学生支援・国際連携課)、学術情報課(図書情報課、研究支援・地域連携課)の3部8課でされている。このうち、学務部長を除いて、部課長職はすべて県派遣職員によって占められている。法人化4年目をむかえた今日、法人職員の中から、あるいは公募による法人職員を部課長に大胆に抜擢していくことを求める。この点で、愛知教育大学では、かつては15人ぐらいいた文部科学省のキャリア組を5人にまで減らし、12の課長職をすべて、公募を含めて法人職員にし、今年4月には初めて女性課長も生まれている。また、大阪市立大学では、部課長を基本的に法人職員が占め、その部下に大阪市からの若い派遣職員をあてるというデザインで改革をすすめており、検討に値しよう。

      教育環境の整備

「良質の研究にもとづく良質の教育」は、応分の環境が確保されてはじめて達成できる。学生から特に苦情が相次いでいるのは冷暖房に関してで、6月中旬下旬、10月上旬の冷房、11月、3月の暖房は、もう少し柔軟に導入してもよいのではないだろうか。

      十分な情報共有と事務系統の統一性:一大学一法人へ向けて

大部分が県派遣職員から構成される法人本部と、法人(常勤・契約)職員の割合が高い大学側との間には、しばしば情報共有に関する齟齬が見られる。加えて旧年度で可能であった事務手続が、人事異動後の配置換えによって新担当者となった途端に「前例なし」として処理されることも少なくない。これは研究・教育に遅延をもたらす不合理な事務体制の実態である。事務職員全員が「より良い大学づくり」の主体であることを改めて想起し、情報の公開と共有を強く求める。

本組合は、結局のところ愛知県立大学が国立大学と同様に一大学一法人となるべきだと考えている。これは佐々木雄太・愛知県立大学学長とも意見が一致する点である。

      研究・教育のための資金の確保 

「良質の研究にもとづく良質の教育」は、応分の資金が確保されてはじめて達成できる。愛知県立大学法人の予算は、教職員給与を含む運営費交付金が毎年1%を削減されるなか、この間に55億円(2007年)から51億円(2010年)に減らされている。この結果、愛知県立大学(看護大・学部を含む)の基盤教員研究費は1億3920万円(2007年)から1億3800万円(2010年)と低水準で推移している。また近年では競争的資金を増大させる傾向にあるが、競争的資金としては科研費があるので、法人内、大学内の競争的資金は整理統合して、個人の教員研究費の充実を図るべきであると思われる。

      次期「中期目標」への現場の声の反映

   法人の経営を大きく左右する六箇年ごとの「中期目標」、「中期計画」は、第一期のそれの策定過程(20052006年度)では、教職員の声が反映される手続きが踏まれたとはいい難い。研究・教育のような専門性の高い業務について、専門家である教職員の意見を反映しないで目標を設定するということは適当ではない。今年度新たに策定が開始されるであろう次期の「中期目標」、「中期計画」の作成に当たっては、教職員側の意見を尊重するよう要求する。また本来、評価は双方向からなされるべきであり、愛知県立大学法人評価委員会が大学や教職員を中期目標に照らして官僚的、一方的に評価することがあってはならない。法人は、「良質の研究にもとづく良質の教育」の実現に向け、本当に教職員の教育研究条件や職場の勤務条件を維持、向上させてきたのだろうか。国立大学等の法人化に際して採択された国会の付帯決議にも照らして、私たち自身が職場における日常感覚に基づいて法人を厳正に評価していくなど、共同的な評価に基づく大学づくりを進めていかねばならない。

 

以上

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Posted on 2 月 2nd, 2011 by spokesman and filed under お知らせ |