2012年 3 月 16日

2011年度・学長交渉

1月11日(水) 12:10~13:20に学長交渉が開催されました。
以下にその結果をご報告いたします。

教員評価については「すでに教授会・教育研究審議会の議を経て決まったことであり、誰の目から見ても明らかに貢献した教員に報いるものである」との方針を覆すことはできませんでした。

評価の正当性を主張する根拠である「誰の目から見ても明らか」という点は、公開されることになっている試行の結果をよく吟味して確認すべきことです。試行結果に関する教員説明会は、教授会からの要求がなければ開催されないとみられます。組合として試行結果の十分な公開を求めるとともに、それに対する意見を述べていくことが大切だと考えます。また、組合員の皆様には教授会などの機会に声を上げてくださいますよう、お願いいたします。

◆議事内容

1. 教員評価について
【組合からの要求】
評価者、被評価者がともに貴重な時間を犠牲にして、評価を行うことの目的は、管理の強化や単なる大学の中期計画や認証評価への対応ではなく、「計画―実行―検証―対策」のサイクルを通して、大学の理念である「良質な研究に基づく良質の教育」を実現するためのものでなければならない。評価が十分な効果を上げるために、評価の目的とそれがもたらす効果、その検証方法などを明らかすることを求める。また、少なくとも評価される側が納得できるように、公平性・透明性が保証される形で実施されることを求める。
現在試行中の教員の評価について、次のような懸念がある。

●短期間で成果の出にくい地道な研究をしている者、学生に迎合しない講義を行っている者が報われないのではないか。
●教員各人のジャンルも専門も異なり、それぞれの学界でのルールや評価のされ方も違っている中で、平等で正当な評価を一律的に行うのはほとんど不可能であり、それが大学にとって益があるとは考えられない。
●評価項目が多岐にわたるが、不服申し立てに対応しうる公平で合理的な評価方式は可能か。
●試行案では評価者はポジティブな評価のみを行うことになっているが、差をつけることには変わりはなく、また、交付金が毎年4000万円削減される中での実現可能には大きな疑問がある。
●自己評価提出が12月であるが、特に後期の授業に関する教育評価が十分に行えるか、疑問が残る。
実施の前には、試行の中で実施すると思われるアンケートの結果を公表するとともに、意見交換会を開催し、これらの結果を尊重して、評価方法・基準などを適切に修正することを求める。
また、三井物産、富士通など民間企業に行き過ぎた成果主義を反省する動きあるが中で、評価制度を導入するのであれば、個人の動機づけにならず、点数稼ぎに走る者の割合を増やすなどの評価の弊害への対処方策を具体的に示すことを求める。
一方、各教員は、自己評価、科研費応募書類、全学ホームページ、学部によっては年報において、同様な業績報告を複数行っている。データベース統合を行い、これらの報告作業を一元化することで教員の負担を軽減するとともに、研究や社会貢献の活性化、研究者総覧の提供などにも役立てることを提案する。

【学長の回答】
評価制度については、2年間かけて準備してきたものであり、その間教授会での議論、組合との交渉も済ませている。学会賞受賞、センター長補佐のように誰の目から見ても明らかな業績を挙げた教員に対してふさわしい評価を行い、待遇にも反映させることは当然のことであり、評価に反対することはナンセンスである。
評価によって教員らの多岐にわたる研究が方向性を縛られることにはならない。評価されたいためだけに研究の方向性を変えるのか。県大が他の大学に勝るのは、先生方がまじめに研究・教育をされてきているところではないか。
今後の大学の有り様については、皆で検討し、示していかなければならない。
大学の将来像については、今、将来ビジョン委員会で検討しているところであるため、是非意見をいただきたい。これまでは、良質な研究に基づく良質な教育を行う普通の大学として大学の王道を行く、という方針であった。良質な研究者・教育者を評価する。
教育評価に関しては、学生の授業アンケートも一つの評価材料にはなりうる。
授業アンケートは教員のレスポンスを記入するようにもなっており、学生の一方的な評価とはならない。適切な授業評価のためには、教員の集団である組合にこそ FD について提案をしてもらいたい。
現代の学生の基礎学力に応じた教育を行うこと、また地道な研究であってもそれが評価されるようにすることは教員としての責務である。
試行結果に基づいた制度の修正については、教育研究審議会と教授会を通して行えば十分であるが、全教員への説明会は必要であれば行ってもよい。
データベースの統合については、データの仕様を統一し、教育研究に関する情報を管理・利用するセクションがあるとよい。
評価制度の効果の検証と見直しについては3~5年、次期中期目標の期間中に見直すのではないか。

2. 教員の教育・研究環境の確保
【組合の要求】
●他大学に比べて低い非常勤講師の報酬の改善とともに、教育効果を上げるための非常勤講師と常勤講師との交流会への支援を求める。本学の非常勤手当は他大学に比しても格段に低い(経験年数に応じて1コマあたり8640円~9850円、ちなみに首都大学東京は10800円(教授)、名大は12000円(教授)、愛知淑徳大学は14800円(教授))。
●学外研究における授業の代替分は通常集中講義によって行われる。本来通常授業で行っているものを集中講義に変えることは、学生のより良い理解のためには好ましいこととは言えない。非常勤講師の手当ての拡充により、教育の充実が図られることを求める。
●TA/SA は特に演習・実験の教育を行う上で必要不可欠である。専門的知識を必要とされる職であるにも関わらず、その賃金は820円であり、1000円を超える近隣国立大学に比べて極端に低くなっている。少なくとも他大学並みの賃金に改定することを求める。
●優秀な外国人教員を確保して、外国語教育を充実させるため、同教員の採用基準の柔軟な運用を求める。

【学長の回答】
非常勤講師単価が低いことは認めるが、予算の総枠があるので、隔年開講など講師数を減らすこと、あるいは遠隔地の講師に委嘱しないことで他大学と比較して高額な旅費を抑えることなどで、捻出できるのではないか。RAについては時給を1000円にすべく法人本部と交渉中である。外国人教員の採用については法人との調整が必要。独立行政法人になったのだから、訴え続けていった方がよい。
ただし、他大学において外国人教員枠を教員の内数にする動きがあるので、慎重に交渉すべきである。

【事務局長の補足】
非常勤講師、TA/SAの単価は芸術大学とも合わせなければならない (ので引き上げは難しい)。

 

3. 事務職員体制の強化に向けて
【組合の要求】
●法人固有職員の今後の採用に対する方針と具体的計画の提示を求める。また、十分な専門的知識を得た契約職員を積極的に正規職員として採用することは一層効果的な業務が執行されることにも繋がるとともに、職員全体の士気を高めることが可能となる。契約職員の正規職員採用への特別枠の拡充を求める。今回の職員採用においては、年齢制限を設けたが、「対外的に説明できる」かどうか疑問である。事務職員評価結果の有効利用を提案する。
●以前よりは改善されたものの、事務職員の超過勤務問題はいまだ解決していない。業務繁忙期における部署を超えた協力などによって超過勤務を削減するとともに、どうしても必要である場合には超過勤務の申告をしやすくするためにタイムカード制の導入を提案する。
●事務職員に対するハラスメントに対応するための相談員の設置を求める。

【学長の回答】
これまでは、大学経験者枠があり、契約職員がそこに応募できたが、今後は年齢構成の適正化が必要である。

【事務局長の回答】
タイムカード制を導入する場合は、教員、事務職員全員に対して行う必要がある。

【交渉終了後の副学長の補足】
現状でも相談員というのはあり、それは法人本部と県大で別の窓口なのだが、一応職員も相談できることになっている。

4. 学生の就学支援
【組合の要求】
学生は大学の最も重要な構成員であり、学生の活性化が大学の活性化につながるといってもよいだろう。学生が十分に勉学に励むことができるように、あらゆる視点から改善を加えていかなければならない。
●授業料の減免制度もその一つである。経済的に困窮している学生に対する支援は教育の保障であり、公立大学に課せられた使命であると考える。
●RA制度を用いた博士後期課程授業料の実質無料化によって博士後期課程を活性化することを要求する。

【学長の回答】
授業料減免制度については、公立大学として必要な使命であると考えている。
しかし、現在授業料収入20億円に対して減免額が1億円強となっており、この割合が増えていくことは国公立大学共通の問題となっている。県立大学でも10%を上限と考えている。
ポスドクの救援としてRA制度による博士後期課程授業料免除等を実施している大学もあるようだが、RAへの経済的支援は、多少は検討の余地があるのではないか。

5. 学生のボランティア活動への支援
【組合の要求】
学生はボランティア活動を行うことによって、社会に貢献するだけでなく、本人とっても勉学以外の貴重な社会的経験を積むことができる。本学においても地域連携センターにボランティア担当教員を配置することなどで、学生のボランティア活動を支援している。しかしながら、今回の大震災の支援のようにボランティア活動を行うための本人の経済的な負担が小さくない場合がある。このような場合に対応するため、ボランティアのあっせんや授業単位の面だけではなく、経済的な支援体制の拡充も求める。これらを実施するためのボランティア支援センターの設置を求める。

【学長の回答】
学生ボランティアへの資金的援助の必要性は認めるが、学生自身で募金活動などを行ってはどうか。ボランティアセンターについては、今後のセンター改組を含めて大学全体の負荷のバランスを見ながら対応したい。

6. 震災への対応
【組合の要求】
今後30年以内に東海・東南海・南海の連動型地震が起こる確率は8割以上であるといわれている。国は2003年にこの連動地震の被害想定をまとめているが、本学では2010年までは東海地震単独発生の被害想定のポスターが貼られており、2011年度現在、いまだに改訂版が出されていない。今回の大震災によって、ひとたび大規模地震が発生すればその被害がいかに甚大なものになるかが如実に示された。そこで、大学には以下を始めとする東海・東南海・南海の連動型地震への対応策の実施を求める。
●帰宅困難な教職員・学生が少なくとも3日は避難生活を送ることができるための水・食料および毛布などの確保
●連動型地震にも対応した耐震補強工事の徹底
●教職員・学生を対象とした連動型地震への備えに関する啓蒙活動の継続

【学長の回答】
緊急震災速報の運用開始など、震災への対応策は法人のレベルで少しずつ進めている。

以上

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Posted on 3 月 16th, 2012 by spokesman and filed under お知らせ |