2012年 3 月 16日

2011年度・理事長交渉

2月8日(水) 12:10~13:30に理事長交渉が開催されました。
以下にその結果をご報告いたします。

理事長は、県立大学の使命は、学士として他大学よりも優位な力を持った卒業生を世に送り出すことであり、これが実現できないならば大学・学部の存在意義を説明できないという強いメッセージを発している。これは、現在の中期計画の理念である「良質の研究に基づく良質の教育」から、教育の結果を最優先するように教員の教育・研究に対する考え方を大きく転換することを迫るものである。また大学の事業に対してスクラップアンドビルドのうちスクラップが必須であるとも考えている。そこで、学問・研究の自由を守り、研究環境の現状からの悪化を阻止すべく交渉を続けていく必要がある。
一方で、事務職員体制については、4月からの組織再編に象徴されるように、法人採用職員、県派遣職員の協力の強化が進められており、外形は整いつつある。これが実のあるものになることを確認・要請していく。また、教員が法人事務に対して冷淡な態度を示していると指摘され、それに対し、組合側から法人事務局に同様なことを感ずると応答し、同じ団体意識を共有することを提案した。

◆議事内容

1. 大学予算の見通しとそれに対応する法人のビジョンの提示
【組合の要求】
2012年度の新学部完成によって、夜間主学生定員の昼間主への移行が終わる。学費に依存する収入が定常値となり、「効率化係数」による運営費交付金の減額がもたらす影響が顕在化し、2016年度以降は赤字となり、支出カットが必要とされている。また他方では、この 2,3年は学費増加や経費削減によって生じた剰余金が「単年度主義」によって年度末に執行されているように見受けられる。例えば、当該学部の反対で実現化は見なかったものの、2010年度は数千万円の「剰余金」があるからという理由で、情報科学部の学生演習用コンピュータをリースから買い取りにする提案がなされた。また、「合理化推進チーム」が編成されたが、それは 1年間限定の部署に終った。これらは法人が大学運営に関する基本方針を持っているか疑わしくなる事例である。
単なる支出のカットだけではない、法人、学長を中心として策定された大学の目標に基づく、予算逼迫への対応の説明を求める。その中で特に、

*法人が県に向けて「効率化係数」を撤廃するなど、大学側の立場での交渉を行うことを求める。
*単純な予算削減によらない、支出削減対策の検討を求める。例えば、
● LED 照明、トイレや階段の電灯への人感センサー導入による光熱費の節減を図る。
● 大村知事によるロボット特区などのマニフェストに即した提案を行い、県から予算を獲得する。
*予算削減によって教育の質を落とさないことを求める。例えば、
● 近隣大学に比べて低額な非常勤講師の待遇を改善する。
● 演習・実験の教育を行う上で必要不可欠な TA/SA/RA の賃金を少なくとも他大学並みの賃金に改定する。
RA の賃金を 1,000 円に引き上げることが計画されているがこれを実現し、TA/SA手当にも波及させる。
● LL 機器、情報ネットワーク機器など最新性が求められる教育用設備のリースを維持することで、設備更新を担
保する。

【理事の回答】
〇平成 21年度の学部学科再編に伴う定員増による学納金増収は平成24年度で一巡するため、平成 25年度以降の現行の効率化係数による減額の取り扱いについては、県に見直しを交渉していく予定である。そのためには、事業のスクラップアンドビルドを一層徹底していただき、県に対して財源確保を訴えていくことが必要。
〇将来に備え、経常経費の縮小が必要。リースを買い取りに更新したことについては、翌年度以降の経常経費の支払いを抑制する観点から行われた。
〇厳しい県財政の状況から、大学においても事業の見直しを含め、効果的・効率的な財政を検討していくべき。
非常勤講師の報酬については、学長交渉時の県大の回答と同様。単価改定については、必要であれば、法人全体で検討する。
RA の時給単価は、業務内容を勘案し、要求どおり 1,000 円に増額する旨大学に通知した。SA/TA は現状どおりが適切と考えている。
教育設備の更新については、将来に備え、毎年の経常経費を圧縮することを考慮しながら最適な方法を考えていきたい。
中期計画の見通しについては、具体的なところまではいっていないが、かなり厳しい状況だろう。6月議会には中期目標を掲げなければならないため、予算的にはそれまでに大学と県とで話し合われる。
法人としては、今の予算規模を増やすことは基本的には不可能と考えているため、スクラップアンドビルドを念頭に、大学と一緒に県に働きかけていくことが必要があると考えている。

【理事長の回答】
次の中期計画でどこまでのことを示せるかが重要であり、各学部学科がなくてはならないものであるということを、県ではなく県民に理解していただけるようにしなければならない。県内他大学よりも優位にあると明確に言えるような計画を示していただき、きちんと議論・検討していきたい。現状維持のみではなく、さらなる発展のための高い目標を掲げた次期中期計画であることを望む。例えばロボット特区についても、他の民間・研究機関がある中でも県大が存在感を示すようなものができるのか、そのあたりも検討したうえで提示してほしい。
財政規模等の観点からも、変化することは避けられないかもしれないが、ハードクラッシュはしたくない。県民から厳しい意見が出てくるため、こちらからの指示ではなく、まずは各学部で検討していただき、危機意識を持った具体的で明確なものを示してほしい。
問題意識については各学部長に申し上げたが、直接教授会等への説明が必要とあれば応じる。法人理事長の役割は、5年後、10年後にもすべての学部がなくてはならないものであるかを常に問うこと。
納得がいかないようであれば何度でも議論したい。
教育に成果が出ることに時間がかかることは承知しているが、これまでの6年間でどれだけの成果が出たか、これからの6年間は成果を出すために何ができるのかを具体的にきちんと説明していただきたい。その間にも4年間で卒業していく学生がいるわけで、そのことを思えば、アクションを早くすべきではないか。
教育か研究かという点から言えば、大学は学生を預かっている場所であり、しかるべき学士力を育てることが99 % を占めていると考える。研究は研究でしっかりやっていただきたいが、国際的に通用する人材(学士力)を育てることが大学の役割であり、まずはその点で他大学よりも優位に立っている必要がある。世の中に出るときの学生の力が他大学の学生よりも劣っていてはいけない。(FD 研究会の講演における「鉄砲に象嵌」の)象嵌の部分ではなく、本格的な革新をしてほしい。

2. 事務職員体制の強化に向けて
【組合の要求】
現状の事務職員体制においては、県派遣職員と法人採用職員の間、あるいは、各部署間の協力体制が必ずしも円滑であるとはいえず、効率的な職務遂行の妨げとなっている。2012年 4月から実施される事務組織改編はこのような問題の解決方法の一つであると考えられる。
*事務組織改革に対する考え方の提示を求める。
● 今回の事務組織の改編の意図とその予想されるメリット、および、今回の改編を含む事務組織改革の全体像の
提示を求める。
● この改編によって部局間の柔軟な協働体制が実現されるなど、実際の改善を要望する。
● 今後の採用に対する方針と具体的計画の提示を求める。
● 専門的知識を十分持つ契約職員を積極的に正規職員として採用することは一層効果的な業務の執行に繋が
る。それはまた職員全体の士気を高めることを可能とする。このことを考慮して、契約職員の正規職員採用へ
の特別枠の拡充を求める。またその採用時には、事務職員評価結果を有効に利用することを提案する。
● 今年度の職員公募には 30 歳以下の年齢制限がつけられた。この年齢制限は今後の年齢構成の計画とどの
ように関係しているか、説明を求める。
*法人採用職員のキャリアプランの提示を求める。
● 法人採用職員のキャリアアップの見通しを明らかにすることで、インセンティブを与えるために、部署ごとの役職
数、昇任の基準を明確に示すことを求める。また、昇任の基準として役割達成度などの評価を使うのか、また
使う時のその利用方法の提示を求める。
● 今回の課長職公募では、法人職員の応募が許されていない。今後はこのような差別を設けることなく、能力選
考による採用を行うことを求める。
● 学務・入試広報を中心とした事務量には明らかな季節性がある。そのピーク時における職員への負荷集中に対
応するため、臨時職員の採用や、正規職員の柔 軟な配置などの職員体制の対応を求める。

【理事の回答】
〇職員の意思を一層ひとつにし、職員のレベルをさらに高めるため、4月から3事務局を1事務局体制に組織改編する。これにより、各部門の連携強化・情報共有・スピーディーな意思決定がはかられ、さらに風通しがいい組織となると考える。
採用計画としては、若年層中心に少人数を継続的に採用していく予定である。必要に応じて、役職者採用も随時実施していく。
契約職員の特別枠は、現在検討していない。公平・公正な採用試験により、大学の内外から優れた人材を確保することが重要。
公募年齢については、愛知県職員の採用と同じ考え方。職員の年齢構成上、長期勤続によるキャリア形成をはかる観点からも必要。
〇キャリアプランについては、現在、キャリアアップ・研修の在り方を踏まえた育成計画を検討中、新年度から実施予定。
課長職公募で法人職員を対象としなかったことについては、愛知県職員における民間経験者枠採用と同じ考えであり、差別・排除の意図はない。誤解を生じたとすれば申し訳ない。現時点で法人内にいる職員はすでに試験をパスした優秀な人材であると捉えており、中の昇格システムにより昇格していくものと考えている。社内公募・異動希望などの制度がまだ整っていないため、そこは反省点であるが、今後検討していく。外部の人材の投入により、より強くなれるような規模の組織であると感じている。
〇入試業務を中心に応援体制をとっている。より一層の応援体制の確立や、特定職員への業務集中とならないよう今後も人材配置・業務配分等を検討していく。

【理事長の回答】
今年のはじめに、愛知県のナンバーワンの職員となるよう職員には訴えたが、教員と職員が同等の立場で一緒にこの大学をつくっていくという体制になっていないのではないか。プロパー化、組織改革、職員の能力向上はこちらで努力していくが、教員の指示のもと職員が動くというような関係に未だあるのだとすれば、組合としても教員全体としてもよく考えていただきたい。
異動や昇進計画については現在検討の段階であり、その実施を想定した上での課長公募でもあったため、現在の法人職員の中での優秀な人材については、来年度・再来年度の異動の中で考えていく。

3. 教職員評価実施の透明化
【組合の要求】
評価者、被評価者がともに貴重な時間を犠牲にして、評価を行うことの目的は、管理強化や大学の中期計画や認証評価への単なる報告ではなく、「計画―実行―検証―対策」のサイクルをとおして、大学の理念である「誇りにできる大学」を実現するための反省材料でなければならない。評価が十分な効果を上げるために、大学の将来像の提示、それに基づく評価の目的とそれがもたらす効果、および、その検証方法などを明らかすることを求める。また、少なくとも評価される側が納得できるように、公平性・透明性が保証される形で実施されることを求める。教員の評価についても試行が始まっている。制度については大学側に一任されているとのことであるが、次のような懸念がある。
*試行案では評価者はポジティブな評価のみを行うことになっているが、交付金が毎年 4000 万円削減される中で実現可能か。評価されない教員の給与カットにつながることはないか。
*教員評価によって、評価される教員とされない教員の差別化が顕著となり、共同体意識が薄れ、教員全体の意欲の低下につながらないか。

【理事の回答】
法人財政は厳しいが、教員評価制度の重要性を理解し、導入に当たっては、まずは評価運用を始める必要性を鑑み、ポジティブ評価運用として対応を考えていく。

【理事長の回答】
特に職員評価については、優秀な人材を評価し、より広い領域で活躍していただき、将来のリーダーとなってもらい、成果が出ない人には教育・指導をする、もしくは、別領域(人事異動等)での活躍のチャンスを与えるということが、評価制度の考え方である。教員評価については、自己評価がベースにもなっており、少し意味合いが違う部分もあるのかもしれないが、評価された教員が本大学における教育、あるいは日本の教育界を将来担っていってほしい。成果が出ない教員には、学生に対する責任をとるためにも、教育・指導等が必要ではないかとも考える。しかし、教員評価については学長が考えることであり、これらは私論であるため、忘れていただいてもよい。
評価というのは格差をつけることが本質ではない。自分の能力を高めていくために必要なことであると考える。

4. 教職員の労働条件の確保
【組合の要求】
数年来の地域手当、期末勤勉手当などの引き下げの結果、多くの教職員の年間給与総額は減少し続けている。給与・手当は教職員の生活の基盤であり、さらなる引き下げには反対する。また、3年連続して実施されている公務員である県派遣職員の給与削減は、争議権の補償としての人事委員会の勧告に反するものであり、これにも反対する。
他大学や企業などから教員として採用される際の前歴換算については、依然不当に低い評価がなされ、「特別な事情があれば考慮する」という対応がなされている。前歴換算の具体的な基準・方法の公表、および、その結果に対する不服申立て制度の確立を求める。

【理事の回答】
〇給与・諸手当等は、地方独立行政法人法により、社会一般の情勢に適合させることと定められているため、公務員に準じた支給が適当。
〇採用者の給与待遇については、採用前に本人に示しており、承知をいただいたうえで採用を希望していると考えている。適切に前歴換算を行っている。

5. 学生の就学支援
【組合の要求】
学生は大学の最も重要な構成員であり、学生の活性化が大学の活性化につながるといってもよい。学生が十分に勉学に励むことができるように、あらゆる視点から改善を加えていく必要がある。
*授業料の減免制度もその一つである。経済的に困窮している学生に対する支援は教育の保障であり、公立大学に課せられた使命である。
*愛知県立大学学生のための奨学制度を作ることはできないか。例えば、イギリス・アメリカへの留学には年間 450 万程度の費用が必要であり、実力のある学生が経済的な理由で留学を実現できないでいる。

【理事の回答】
〇減免については、これまでも最善を尽くしてきた。減免額が大きく増加してきているため、何らかの制度の見直しが必要と考えている。
〇奨学制度については、成績優秀者に対する奨学金の交付を行っている。厳しい財政状況であるため、海外留学のための奨学制度については、現在は考えていない。

【理事長の回答】
一部の留学者のためだけの奨学制度というのは難しい。学部等の柱として必要ということであれば、積極的に取り入れていきたいが、そうではないのであれば、限られた県税を使った財政の中で要求するものではない。

【理事からの補足】
中期計画の中では、現状維持の状況のままで公的機関からの留学者奨学金財源確保は難しいであろう。

【竹村部長からの補足】
該当者が少人数ということであれば、中期計画とは別に考えた方がよい。2~3割が該当となるのであれば、個人への支援として妥当かどうかをよく議論し、その議論の結果認められた場合にはスクラップアンドビルドで財源を確保しなければならない。

6. 学生のボランティア活動への支援
【組合の要求】
学生はボランティア活動を行うことによって、社会に貢献するだけでなく、勉学以外の貴重な社会的経験を自ら積むことができる。本学においても地域連携センターにボランティア担当教員を配置することなどで、学生のボランティア活動を支援している。しかしながら、今回の大震災支援のように、ボランティア活動を行うためには少なからぬ経済的自己負担が学生にのしかかってくる。このような場合に対処するため、ボランティアの斡旋や授業単位認定の面だけではなく、経済的な支援体制の拡充を求める。

【理事の回答】
中長期的な取り組みが必要という観点から、平成 24年度当初予算として180万円を予算措置した。

7. 防災対策
【組合の要求】
今後 30年以内に東海・東南海・南海の連動型地震が起こる確率は8 割以上であるといわれている。今回の大震災によって、ひとたび大規模地震が発生すればその被害がいかに甚大なものかが如実に提示された。そこで、大学には以下の項目を初めとする東海・東南海・南海の連動型地震への対応策の実施を求める。
*帰宅困難な教職員・学生が少なくとも 3日は避難生活を送ることができる水・食料・毛布などの確保
*連動型地震にも対応した耐震補強工事の徹底
*避難経路確保などの火災への対応
*連動型地震への備えに関する、教職員・学生を対象とした啓蒙活動
*太陽光・風力発電などの導入による最低限のエネルギーの確保
*コンピュータシステムの機能喪失に対応するための、管理運営・教務・研究にかかわるデータのバックアップ体制の確立

【理事の回答】
〇水を100名1日分、乾パンを500食程度備蓄している。
〇すべての建物が耐震基準を満たしている。今年度は緊急地震速報放送設備を設置し、年度末までにはガラス飛散防止フィルムを一部採用予定。
〇避難経路は、通路の不要物品を適宜点検、整理し、確保に努めている。
〇啓蒙活動については、平成23年11月に学生・教職員対象に講演会・避難訓練を実施した。今後は常時携帯できる地震対策マニュアルも作成し、配付したいと考えている。
〇自家発電により、電力量を通常の半分に抑えた場合、20時間の供給を確保できる体制を整えている。
〇データのバックアップは、定期的に行っているが、震災後速やかに回復できるようデータ保存場所も含め、来年度以降検討していきたい。

【理事長の回答】
今年度、ハード面では色々と行ってきたが、11月の講演会への参加が少なかったことからも、教職員・学生には自分の命は自分で守るという意識があまりにもなさすぎるものと考えられる。まずは自分の身を守る意識を高めたうえで、それを補完するのが官公庁や大学の役割であると考えている。啓蒙活動は自分自身でまず行うべきである。

以上

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Posted on 3 月 16th, 2012 by spokesman and filed under お知らせ |