2012年度 重点要求項目
2012年度の重点要求項目が定期大会で次のように採択されました。
I 勤務労働条件改善への取り組み
I -1 給与・手当の改善
次期中期計画を実施するにあたり、本学が「なくてはならない大学』をめざすためには、それを担う教職員の給与等待遇改善を基盤とする高度なインセンティヴが必要である。少なくとも、国立大学や全国の同規模公・私立大学と比鮫して引けを取らない待遇が必要である。運営費交付金削減の攻撃の中で、組合は、本学の発展の基礎として教職員が将来の生活設計に見通しを立て、日々希望を抱いてその業務にあたることができるよう取り組む。
(1)職員とりわけ契約職員の給与改善
日本における最低賃金の低さは、非正規雇用の拡大と相まって貧困率の拡大という近年の社会問題の最大の原因となっている。さらに、愛知県の最低賃金は全国的にきわめて低い水準であり、本学もこれを準用していることは問題である。2012年度の重点的な課題の一つとして、後述するように契約職員の雇用制度、給与制度を改善することを要求する。
また、充実した教育・研究環境を確保する観点から、SA、TAの給与を少なくとも時給1,000円にすることを要求する。
(2)教員の給与・手当の改善
研究者の流動化が政策的に推し進められ、また現象的にも拡大しつつある中で、優れた資質を有する教員・研究者がよりよい給与等待遇が保障される研究機関に流れることは必然である。本学が優れた頭脳の流入先となるのか、それとも流出源となるのかは、本学教員の給与水準が大きな要因となる。教員の生活保障だけでなく本学の発展のためにも、教員給与をベースの次元で改善させるための取り組みを進める。
2012年度は特に、大学業務との関連で多くの大学において通常取り入れられている手当として、入試関連業務のうち、少なくとも学部並びに大学院の入試問題作成手当(作問手当)について、秘匿義務や作問責任の重大性、出典参考とする書籍購入などを考慮するとともに、法人化前には制度化されていたものであることから、その「復活」を要求する。
(3)非常勤講師の待遇改善
非常勤識師が本学の教育を支えていることは言うまでもないが、その処遇は依然改善されていない。本学専任ではないにも拘わらず、魂を込めて毎回の講義に全力投球されている方々がたくさんおり、今後も継続して良質な教育を提供いただくためにも、他大学に比べて低い報酬の改善を要求する。
(4)勤務労働条件の不利益変更に対する代償措置の確保等の取り組み
2011年度には住宅手当が削減されたが、代償措置はとられていない。労働契約法は第9条で「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更すること(はできない。」とし、一方的な勤務労働条件の不利益変更を禁止するとともに、第10条で「就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なもの」と勤務労働条件の不利益変更ができるルールを定め、使用者が不利益変更の「代償措憧その他関連する他の労働条件の改善」の提案をすることを必要としている。この法の趣旨に照らして、勤務労働条件の不利益変更については事前の交渉を徹底させるとともに代償措置を要求することで勤務労働条件改善の取り組みを進める。
I -2 教職員評価の実施の適正化
今日の社会情勢においては、評価制度そのものに異議を唱えることは困難に思われ、組合として制度の試行導入には受容した経緯があるものの、一生懸命働くことへのインセンティヴとして評価制度を導入したのであれば、試行錯誤の際に生じた課題や成果の報告がなされて然るべきである。
しかしながら、こうした報告がなされず、検討・改善する余地のないままなし崩し的に実質的な導入が実施されている。そもそもこの制度には、さまざまな疑念や課題がある。例えば自分の研究や業務を理解し、的確な助言ができる者から評価されるのであればまだ納得できる面もあるかも知れぬが、そうでない者が評価をするならば、評価の透明性や公平性はどのように担保されるのであろうか。評価者にとっても貴重な時間を無駄に費やしているだけであると言わざるを得ない。
また、教員の場合、評価する立場に就いたとしても、任期を終えれば評価される立場になるため、当たり障りのない評価となるだけであろうし、事務職員の場合、所属長とのヒアリングにおいて、単なる世間話で終了したとか、他の職員の評価表を見ることができたなど、上司自らがやる気のない、かつプライバシーも守ることができないなどの問題も明るみになっている。
このため、組合としては導入された評価制度の試行段階での課題ならびに成果の報告を求めるとともに現状抱えている問題点の検討・改善を要求し、評価実施の適正化に取り組むものとする。
I -3 勤務労働条件に関わる制度改善
(1)休日出勤の代償の実質化
今年度から始まった住居手当の廃止や数年来実施されている地域手当等の減額などにより、多くの教職員の年間給与総額は減少の一途を辿っている。また、大学入試センター試験の監督業務など土日返上で業務にあたっても本学試験時期とも重なり振替休日取得が不可能である。生活基盤となる収入の減少や休日未消化をはじめとする労働環境の悪化は、頭脳流動化が進みつつある高等教育業界において有能な組織けん引役の流失をもたらす原因となろう。
こうした観点から、これ以上の収入減少には断固反対するとともに休日出勤の代償を取得可能とすることを要求する。
(2)契約職員の待遇改善
本学勤務の契約職員は事務職員の半数近くを占め、本学事務組織運営には欠かせない立場の職員である。しかしながらその任期は最長3年と定められており、入職しても仕事の習得に反比例して雇用不安が増大するというまさに腰を据えて仕事ができない環境で日々の業務に従事させられている。
また、契約職員が担当する業務は、正規職員並みの貰任や業務量を強いられるものもあり、加えて所属長がその担当業務を十分に把握していないため、適切なアドバイスやサポートがされず、孤立した状況で奮闘しているという状況が散見されまた報告されている。
こうした使用者側にとって使い勝手のいい調整弁的な扱いを我々教職員の仲間である契約職員が受けていることは人として看過できない。ましてや契約職員として採用され所属長から「専任職員試験に合格するようがんばれ」と言われたにも拘わらず、いざ専任職員募集要項を見ると年齢制限が設けられており受験できないことが判明したという事実がある。このようなことは絶対あってはならない。
このため、正規雇用の拡大も含め、契約職員に対する待遇改善として以下の要求実現に取り組む。
①今日の大学において、契約職員は最長3年適用よりも、正規雇用が求められる5年雇用までを基準に最長5年継続を適用している場合が多い(名古屋大、愛知淑徳大等)。よって本学においても最長5年継続への変更を求める。
②超渦勤務が発生した場合、躊躇わず超過勤務手当申請できるような職場環境作りを求める。
③日常業務に対する評価を教職員の賞与支給日に併せ、契約職員に対し、一時金支給を求める。
④ 本学における契約職員雇用の最長年数が終了しても他大学に容易に転籍して働けるよう、周辺大学と共同で契約職員継続雇用システムを構築すること。
⑤契約職員が本法人専任職員試験受験の際に有効となるインセンティヴを設定すること。
⑥契約職員が担当する業務が、正規職員担当業務より負荷のかかることのないよう担当業務の見直しを図ること。
⑦大学業務や各種研修に積極的に参加するこどが可能となる環境を整えること。
(3)教員の割愛等に関わる待遇保障の制度改善
他大学等から本学に赴任する教員の給与が、不服申し立て制度を含む適正な前歴換算の制度を確立することを引き続き追求する。また、引っ越しに伴う赴任手当等の拡充並びに対象者への周知の徹底を求める。
国公立大学間での割愛等に伴う不利益をなくすため、退職金の通算制度の確立を求めて取り組む。
(4)非常勤講師の授業支援の充実
非常勤講師は本学教育の一躍を担う重要な存在であり、更なる情報交換や支援体制の充搭を図ることが、学生への教育効果を高める結果に繋がることは言うまでもない。
また、総時間数に変更がない場合、非常勤講師の担当講義が減少することは、専任教員の担当講義時間が増加し自由な研究・教育活動に支障を来すことにもなる。
このため、非常勤講師の担当講義の安定化並びに本学教員と連携し、教育効果を高めるための研究会などの支援策の拡充を追求する。
I -4 教員の教育・研究環境の確保
教員の教育・研究環境の確保について、2012年度は特に教員の適正配置について検討し、教授枠52%の問題、担当科目数および負担の不公平是正対策(増担手当)に取り組む。
Ⅱ 民主的な大学運営への取り組み
Ⅱ-1 大学改革への取り組み
2012年度は次期中期計画策定の年度であり、今後6年間における本学の将来を見通した改革について組合としても積極的に意見表明をしていく。そのために、学内教研等を通じて、全国の大学改革をめぐる情勢についての学習活動を進める。
また、大学の教育研究部門のトップが8年間にわたる佐々木雄太元学長から高島忠義新学長に移り、今後3年間における新たな体制がスタートした。こうした状況をふまえ、組合は、大学との信頼関係の構築を追求するとともに、それを基盤として、大学の民主的運営に関わる諸課題の解決に取り組む。
なお、2012年4月から、旧法人本部は組織変更により大学の一組織へと変更されたが、業務自体が大学現場組織と乖離していないか、組合として他大学組織とも比較しながら業務の検証を行い、適切な大学運営のための取り組みを行う。
Ⅱ-2 諸要求実現への取り組み
運営費交付金が減額されつつある中で、組合は、県大に働く我々「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべき」(労働基準法第1条)労働条件を確保し、その改善に向けて取り組む。
(1)組合員アンケートの実施と要求書の提出
諸要求を把握するための組合員アンケートを実施し、とりまとめた要求書を法人に提出する。
(2)定例的な労使協議の実現
従来の対理事長および対学長交渉とは別に、信頼関係に基づく労使間の定例的な協議を追求する。
(3)安全衛生委員会
組合の代表者が委員として参加する安全衛生委員会(委員9名中、組合代表3名)を重視・活用し、特に労働安全衛生に関わる諸問題について組合員の意見を大学運営に反映させる。
(4)職場環境改善
職場環境改善に向け、2012年度は、特に管理職のマネジメント意識に関わる課題の解決に取り組む。
管理職として手当をもらっている者が、その意味を汲むことなく所管組織の総理を怠ることは決してあってはならないが、とりわけ事務職においてはマネジメント意識の希薄さが顕著である。換言すれば、上からの指示がなければ動く必要はなく、何もしないことが良いことであるという環境が年々改善されつつあるも依然として幅を効かせている。また教員職においても学部単位で各委員に任せていると言えば聞こえはいいが、実際どの程度把握ができているかは甚だ疑問である。こうした状況では、先出の評価制度が正常に機能するはずがなく、むしろ意欲低下につながる恐れさえ孕むこととなる。
このため管理職には押し並べて以下の意識や行勤を求めるとともに、組織体を活性化させ、個々の教職員が充実した成果を残せる職場環境を形成するよう求めるものとする。
①管理職による強権的な業務遂行の阻止
やむを得ない場合を除き、突発的に人を動かすことは、計画的に業務遂行する教職員にとって、あらぬストレスを与えるだけでなく、超過勤務を発生させる原因となる。元々管理職側において計画的な業務遂行や的確な指示がなされていないがゆえ、こうした事例が散見されるのである。したがって、管理職は所管組織の業務負荷状況を考慮しつつ計画的かつ的確な業務遂行をするよう求める。
②マネジメント能力向上の研修
適切なサポートやアドバイスにより、当該契約職員の業務軽減を図るのが本来の管理職である。マネジメントの基本である相手の立場に立って物事を考えることさえできないようでは人材育成が可能な職場とは言い難い。
このため、管理職になってからマネジメント研修等を実施するのではなく、各職位段階で次のポストを見据えた研修を行い、プレイングマネジャーとして活躍できる人材を育成していける環境を整えるよう求める。
③重複業務の改善、削減
今年度既に着手されるようではあるが、理事長が所信表明で述べたように本学は小企業であるにも関わらず、依然人員が潤沢だった頃の体制を引きずり、強烈な縦割り構造組織であるがゆえ、セクション単位あるいは教員組織と事務職員組織単位で重複した業務を行っている場合がある。また、セクション単位で業務の棚卸が十分でないため、セクションに関係なくも人に仕事が着いて回るという事象も散見される。
このため、こうした重複業務を洗い出し適正なセクションに集中化するよう改善を求めるとともに、人に仕事がついて回ることで当該者に負担が増えることのないように、また異動により仕事が滞るようなことのないよう、適正化を図ることを求めるものとする。
(5)防災対策
東日本大震災の惨禍をふまえ、また、東海・東南海・南海連動型地震に関する最新のハザードマップに対応した本学としての防災対策の取り組みの強化を追求する。
また、東日本大震災に対する継続的支援を促す立場から、学生をはじめ、教職員が主催する各種チャリティーイベント、被災地支援への人的支援、資金援助等を積極的に推進する。
(6)防犯・安全対策
2012年度は、教職員や学生の安全確保の問題について特に重視して取り組む。3年前に中央大学内で発生した卒業生による教授刺殺事件は我々大学教職員にとってはまだ記憶に新しいといえる事件であるが、それ以降も全国の大学において爆破予告騒動や不審者侵入による窃溌や暴行が少なからず発生している。本学においても日中は守衛による入構チェックが行われているが、十分な防止策が識じられているとは言い難いのが現状である。また、とりわけ夜間における学内施設の一部は十分な照明が設置されておらず、いつ大きな事故が発生しても不思議ではない箇所がまだまだ見られる。
こうした事案は、我々教職員のみならず、非常勤講師、そして学生にとって不安を与えるだけでなく、安全を脅かすものであると言っても過言ではない。また、何か事が起きてから対応するような後手の姿勢では本来守られるべきものを守っている組織とは言い難い。
従って、学内環境並びに教職員や学生の安全確保の観点から以下の項目について要求していく。
① 学内防犯体制・設備の充実
事案が発生してから対策を講じるのではなく、日ごろから学生が安心して学べる環境を提供するのも大学の使命であり、教職員は万が一の際には十分な対応が取れるような体制と訓練が必要である。
また、学内で発生した事故やトラブルなども、その予防措置や情報共有されていない。予防措置を施すことや危機意識を学内で共有することは新たな問題を未然に防ぐと考えられる。そのためにも事案を未然に防ぐ方策を識じるとともに情報共有できるような組織作りを可能とする体制確立を求める。
②救命機器の充実と訓練の実施へ
我々教職員がAEDはどこにあると聞かれて適切に答えられる人はどのくらいいるだろうか。心肺停止から蘇生措置開始時間が遅れれば遅れるほど救える命も救えなくなってしまう。また、AED設置場所から研究棟最上階でAEDが必要となった場合、その場にAEDを持参するだけでもかなりの時間を要してしまう現状がある。このため、AED等救命機器の増設、ならびにAEDの利用訓練の普及を求める。
③屋外夜間照明の増設
学生の課外活動施設や教室棟から課外活動施設へ通ずる道筋は、まだまだ照明設備が十分でない箇所がある。また、キャンパス中央付近においても夜間に段差箇所が不明瞭でつまづく学生もおり、地面がタイルばりないしはコンクリートであることを考慮すると、危険極まりないと言っても過言ではない。
④リニモ駅から本学までの安全確保
リニモ駅から本学までの通勤通学時、とりわけ朝においては、横断歩道を渡る際、歩行者が横断中にもかかわらず同方向左折車両の停車が求められるため、車両も強引に左折したり、一旦直進した上で第2通行帯に強引に左折したりなど、危険な状況が少なからず発生している。もちろん大学で対処することは限界があるものの、管轄行政に横断歩道のスクランブル化や時差信号作動を依頼するなど、努力は示す必要がある。
⑤学生相談体制の開設
学生が、些細な悩みやトラブル等を抱え込み、後々大きなトラブルに発展することのないよう、弁護士による出張法律相談窓口の開設を求める。
また、学生の要望、要求が増えつつあるなか限られた人員で対応を強いられている学生支援担当窓口の充実を求めるとともに、メンタル面でサポートが必要な学生に対して、十分にサポートできるよう、更なる学生相談体制の充実を求める。
(7)入札制度および検品体制の合理化と業務負担軽減
所謂「安物買いの銭失い」により、かえって入札制度が支出増加を招くようなことのないよう、また、不合理な制度により職員の過重な業務負担を招くことがないよう、検証体制および検品体制を検証し、その合理化を求めていく。